生かされて。/イマキュレー・イリバギザ著〜ルワンダの大虐殺の中を生き延びた女性の手記

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1994年「永遠の春」と呼ばれたルワンダで起きた大虐殺。

大鉈・ナイフを手に殺戮者と化した隣人フツ族に、100日間で100万人のツチ族が虐殺されました。

本書は奇跡的に生き延びたツチ族の女性イマキュレーの手記です。

この本を読んだのはもう何年も前で、当時図書館でタイトルに目がとまり、気になって手に取りました。

読みながら涙を抑えられませんでした。

一部読み進めるのもつらい箇所がありましたが、彼女のひたむきさ、信仰の篤さ、未来を信じる心の強さ、人に尽くしたいという愛の深さに心を打たれました。

昨年12月に東ティモールが舞台のドキュメンタリー映画「カンタ!ティモール」を観たときに、列強の身勝手に翻弄され戦争で苦しみながらもたくましく生き、愛を示す人々の姿をみてこの本のことを思い出しました。

この本もたくさんの人に読まれてほしいなと。

書籍「生かされて」
書籍名:生かされて。
著者:イマキュレー・イリバギザ
出版者: 東京 PHP研究所
出版年 2006.10

(内容)
昨日まで机を並べて一緒に学びあった友人が今日には大鉈を持って自分の名を叫んで探している。殺すために・・・。

奇跡的に心ある人に匿われ隠しトイレの中に彼女を含む8人もの人間が隠れました。

身動きとれない狭さで、大柄な彼女の膝の上には小柄な誰かが座っている状態。

食事の補給はみつからないよう時々しかなく、音は一切立てられない。息も殺すほど。

用を足す時は上のトイレの水が流れる時に、同時にわからないよう合わせて流す。

そんな悲惨な虐殺の真っ只中でも未来を信じ、将来人の役に立つ仕事がしたいと英語の辞書を差し入れてもらい、身動きできないその中でひたすら辞書を読んで英語を勉強するイマキュレー。

その信念で彼女は後に国連で働くことになります。

本書は「虐殺に至った歴史的な背景や政治的な解釈は他書に任せる」と最初に断り書きがありました。

歴史の記録書のような詳細な説明は控えめで、虐待の描写も生々しい箇所が多少はあるものの他書と比べれば抑え気味で読みやすくなっています。

それよりも彼女が虐殺の中で、何を感じ、耐え忍び、傷つき、許し、神を信じ、全てを乗り越えて再び人を愛し、そして人に尽くす仕事をするようになったかに重点が置かれています。

私が何よりも感動したのは、治安が戻ったあと、彼女の家族を悲惨な方法で殺した相手が牢に拘束されており、彼女がそこへ訪問する時の記述。

彼女は罵りに行くのではなく、許すために会いに行った。

その行動ができるに至るまでの彼女の葛藤や苦しみを思うと胸が痛みました。でもそこから「許し」の意味と力を学びました。

もともと虐殺が起こった原因には大国の関与が大きな原因としてあります。

植民地を管理するのには人々の間に身分のピラミッド構造が会ったほうが、管理しやすいからです。

ツチ族とフツ族は共存して問題なく生活していたところに、大国が身分制度を取り入れて少数のツチ族を上流人種とし、人口の大半を占めるフツ族は下級扱いにされました。

政治も少数のツチ族が決めてフツ族が従うといういびつな構図が作られ、恨みと憎しみ、不満が募っていた。

諸外国に翻弄された結果といえる大虐殺。

これは今でも世界で似たようなことが繰り返されていますね。

資源争奪戦で大国の思惑に振り回され都合の良いように利用される国々や人々。そういった人災による戦争、難民、テロ。

こういうことが早く世界からなくすためにも、世界で何が行われてきたのか、そして今も世界で何が起こっているのかに多くの人が関心をもつことが大切だと思います。

本書は虐殺の歴史とともに、一人の人間がどこまで強くなれるのか、信仰とは・・・といったことがぎゅっと纏められています。

平和のありがたさを痛感させてくれる一冊でお勧めです。

投稿者プロフィール

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和花二胡奏者&ヒーリング整体&アーティスト
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