不幸は人生の財産/曽野綾子著 〜苦労知らずという経験の貧しさを思う
なにか面白い本は無いかと思って探していたところ新聞の書籍紹介が目に留まった。書籍名は忘れてしまったけど著者は曽野綾子さん。有名な日本の作家さんだけど、私はまだ彼女の作品を読んだことが無かった。
作家 曽野綾子さんってどんな方?
小説も書かれるけど最近は生き方や老い方をテーマとしたエッセイが多く、人気を集めているようで、本屋でエッセイの棚に行けば大概数冊置いあるのですぐ見つけられる。
なぜだか無性に曽野さんの本を読んでみたくなり、本屋で立ち読んで見たら面白かったので図書館でも探してみたらあるわあるわ。エッセイの書棚にずらりと著作が並んでいて数の多さにまず驚いた。
面白そうなタイトルばかりで、いくつもひっつかんでソファでパラパラと拝見・・・おもしろい!!
気に入ったものだけ借りていこうかと思ったけど面白そうなのがありすぎて選択困難。でも一度にそんなに借りても読みきれない。とりあえずその場で2冊速読で完読。「不幸は人生の財産」「人間の分際」「老いの僥倖」「旅は私の人生」を借りてきました。
著者は日本の著名な作家であり文化功労者であり、海外での人道活動や旅行経験も豊富で、その経験から鋭い視点と飾らないストレートな言葉で語る内容はとても痛快で気持ちがいい。今日はその中の1冊だけご紹介します。
書名:不幸は人生の財産
著者:曽野綾子
出版社:小学館
初版:2013/2/26
頁数:255
タイトルからすでに全て語っていますね。なんてキャッチーな書籍タイトル。
今の日本人はやはり苦労知らずだと思う。こう言ってしまうとすぐさま反論が聞こえそうだけど、海外に目を向けてみると相対的にはやはり苦労知らずと言えると思う。
総じていえば日本は長らく平和で、安全で、経済力があり、物質は豊かで、清潔で、最先端と伝統が混じり合い、衣食住が守られており、教育も医療も受けられ、子供には過保護だと思う。
日本にだって犯罪はあるし不正もある。でも海外のような内戦や過激なテロもないし、銃社会でもない。海外生活をしてみると日本はありえないくらい安全だと感じる。なにせ夜に女性が危険を感じることなく独り歩きできてしまうなんて海外からみたらびっくりだ。
著者の経験には足元にも及ばないが、私もエジプトに住んだり、中近東・中南米を一人旅してきたからそれなりに危ない目にも何度かあったし、怪我もしたし病気にもなった。宿の近くで爆弾テロがあったときは本当に身の危険を感じた。階級社会の下級階層の悲惨な生活もみた。
だから著者のように発展途上国や紛争地帯や貧困の実際を目にしてから日本をみると、良いところも悪いところもあるけどやはり日本は本当に恵まれていると心底思う。
自由一つとっても、内戦や宗教対立、身分制度等々様々な理由で命の危険や差別、暴力にさらされている国から見たら、社会の様々な面で自由が認められているのは凄いことなのだけれど、生まれてからその中だけで生きてこればそれを自覚することは難しい。
人の経験から学ぶことができるツール「書籍」
こうした今の日本の社会では当然人間性を鍛えるような強烈な経験が少なくなってしまう。現代日本の危うさや社会問題や人生について、著者は自らの豊富な経験から痛快なほどに語ってくれる。
なかなかそんな過酷な経験なんてできるものでもしたいものでもないので、本というのは経験者の言葉を聞ける最高のツールだ。読書は知識を深めてくれるだけでなく人間性を豊かにしてくれると思う。実際の経験と読んで知った経験では違うけど、知らないよりはいい。
例えば著者は人道援助の活動をされているので現地状況に詳しい。例えば本書では、こんな話が書いてあった。
厚生労働省は「貧困を測る新たな指標を定める」ことにし、国民の失業率や医療をどの程度受けているかなども調査の項目に加えた上で、「携帯電話などの必需品が買えるか」など、生活に密着した部分の質問も加えるという。でもこんな質問は海外の本当の貧困からしたら、おかしくさえあるだろう。
しかしアフリカだったら、この質問の内容はかなり変わるだろう。
「不幸は人生の財産」より抜粋
「あなたは雨に濡れないで寝ていますか」
「飲水をどれくらいの距離から運んでいますか」
「水浴、選択のできる、川、湖、沼、などの水源がどれくらいの距離にありますか。またはその水は一年のうち、何ヶ月使えるだけの水量がありますか」
「トイレはありますか。家の中ですか、外ですか。また何軒の家でそれを共有してますか」
「子供が歩いて通う学校までの距離は、次のどれに相当しますか。1キロ、2キロ、3キロ・・・」
「子供が学校へ通う途中で、レイプされる危険はありませんか。現実に起きていたら、年間の回数を知らせてくだい。」
「学校で使う教科書は何人で一冊ですか」
「あなたの子供が、労働に従事する時間は、次のうちどれくらいですか。毎日3時間、6時間、10時間・・・」
(中略)
もちろん、これは私の想像上のアンケートだ。多くの人が答えられないだろう。その理由はまず字の書けない人が多いことだ。
こんな具合で、著者の指摘と言葉は広い世界を見てきてたくさんの経験から出てくる言葉なのでとても重みがある。
今回借りた本は他もどれもおもしろかった。本返しに行ったらまた同じ著者の別の本を借りてきちゃいそう。
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・ヒーリング整体や二胡演奏、アートを通して心と身体の健康を応援します。
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