老いの僥倖/曽野綾子著〜人間が熟れてくるのは中年以降
「年月のおもしろさは、個人の変貌にある」と著者は言う。確かに数年先の自分のことさえ予測がつかない。10代の若い頃の性格や考え方、夢、行動パターンまでも、20代、30代と年を重ねるうちにどんどん変わる。
若いうちなんて失敗と模索の繰り返しだし若気の至りなんてことはいくらでもある。「人が熟れてくるのは中年以降」で、「晩年にこそ僥倖(思いがけない幸せ)が詰まっている」と著者は言うが、やはりそうだろうと思う。
じゃあその僥倖(ぎょうこう)を得る秘訣はなんだろう?
書名:老いの僥倖
著者:曽野綾子
出版社:幻冬舎
初版:2017/9/30
頁数:246
何が人を変えるって、著者曰く、それが加齢のチカラだそう。歳月は叡智の一部であり、著者にとっては自身の中の荒々しい醜さの漂白剤であり、研磨剤であり、溶解剤でもあり、希釈剤でもあったそうだ。
私はまだまだ若輩で老いを語るにはまだ人生折り返してもいない。
…そこは強調しておかないとね(笑)
だけど、それでも歳月を経る間に、世界が私の狭い視野をハンマーで砕いて広げ、出会った人々が私の色眼鏡をとりあげ、出来事や問題が私を研磨し、養分を与え、目を開かせ、気づきを与え、加齢が自身の分相応を教え、自他共に許して手放すことを教えてくれた。
そして今の私がある。もちろんこれからもそれが続いていくのだろう。
そうすると10年、20年後の自分はどんな心境でどんな性格で何をしているのだろう。何を喜びとしているのだろう。なにをもって幸せと感じ人生これで良しと満足しているのだろう。
本書には、目次にある小見出しを見ていくだけでも気になるフレーズがいくつもある。ほんの一部を紹介しよう。
- 回り道するときには、する必然がある
- 肩書のない年月こそ人は自分の本領を発揮できる。
- すぐ怒るのは老成していない証拠
- 不透明なおもしろさを知る
- 「輝くような貧乏を体験しています」
- 不幸を無駄にしない
- 悲しみでさえ薄いより濃いほうがいい
- 得るだけの人生では運が悪くなる
- 人生は思い通りにいかないからすばらしい
- 「いい顔」になる境地とは
- 物を捨てると若さを取り戻す
- 外見が衰える頃から輝き出すもの
- 不足は人間に生きる意欲を与える
- 恵まれすぎると楽しみが減る
- 不愉快なことを愉快にする
- 体が衰えて初めて分かることがある
- 老いの試練は神からの贈り物
- 「老・病・死」が人間を完熟させる
- この世は「永遠の前の一瞬」 などなど
小見出だけでなんと14頁もある本書のほんの一部を抜粋しただけだが、見出しをざっと読んでるだけでもなるほどと頷いてしまう。
もういやなことを考えている暇がない
さて完読して一番心に残ったフレーズはこれだ。
好きなことは以前と同じくらいできるが、したくないことがうんといやになったのは、この先何年生きられるかと計算するからである。私はもういやなことを考えている暇がないと思う。
「老いの僥倖」より
(中略)
自分の持ち時間には限りがあるのだから、時間は徹底して自分を上等なものにしてくれるものに使いたい。
これに付け足す言葉はないように思う。本当に、そのように時間を使いたい。
投稿者プロフィール
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・ヒーリング整体や二胡演奏、アートを通して心と身体の健康を応援します。
・高齢者施設等へのボランティアの訪問演奏承っております。
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