奇跡の脳(ジル・ボルト・テイラー著)〜脳科学者本人の脳が壊れた!

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本屋や図書館に行くと必要な本が目に入るってことありますよね。「必要な本は降ってくる」とも。私はなぜその本が気になったのか解らないのになぜか買ってしまい、その後自分に本当に必要な本だったということがよくあります。

時には自分ではなく私の周りの人が必要だったこともよくあります。たまたま読んで気になって覚えていた情報や言葉、フレーズが、直後に誰かの役にたったというような出来事。面白いですよね。

今回この本はまさにそういう本で、必要な方に必要な情報が届く架け橋となれました。読み終わった翌日に必要としている人に会ったんです。不思議ですよね。

前書きが長くなってしまいました。

期待を背負った若き脳科学者のエキスパートが脳卒中に!

神経科解剖学者であり、インディアナ州立大学で博士号取得後、ハーバード医学校で脳と神経の研究に携わりマイセル賞を受賞。35才の若さにして史上最年少でNAMI*の理事となる偉業を果たし、エネルギッシュに活躍する女性。それが著者のジルです。

*NAMI(全米精神疾患同盟)重い精神病を患いながら生きている人々の人生を改善することに貢献する、草の根的な組織の中では最大規模を誇る。

その彼女が活躍の最中、ある朝目覚めると自分の異変に気づく。頑張って動いても、どんどんおかしくなっていく・・・体が言うことをきかない・・・様々な感覚異常・・・そしてついに彼女は気づく。

(ああ、なんてこと、のうそっちゅうになっちゃんたんだわ!のうそっちゅうがおきてる!)

そして次の習慣、わたしの心に閃いたのは・・・・・

(あぁ、なんてスゴイことなの!)

「奇跡の脳」より

いや、普通はそういう反応にはなりませんよね(笑)

この本には病気にかかった悲痛さはありません。文調は暗いどころか明るく、最初に彼女の頭を占めたのは小躍りしたくなるような気持ち。なぜなら・・・

(そうよ、これまでなんにんのかがくしゃが、脳の機能とそれがうしなわれていくさまを、内側から研究したことがあるっていうの?)

「奇跡の脳」より

まぁいないでしょうね(笑)

でも彼女が脳卒中で発見し体験しそれを赤裸々に語った内容は本当に興味深くて魅力的です。彼女はこの時、左脳の大出血が進むにつれ、認知能力が奪われ、記憶も奪われ、言語能力も失っていき、発話もできなくなっていき、視覚、聴覚もおかしくなり、その果てに見出したのは・・・左脳の認知能力、識別能力、自分を一つの個体として認識させる司令塔から開放された右脳マインドの自由な彼女。

認知能力が無くなり、どこからどこまでが自分かわからない。左脳があれば皮膚の境目までが自分。でも認知できないから自分は細胞・粒子の塊であり、空気も粒子、他人も粒子、自分と他人は別れておらず、すべて一つ。宇宙と一つ。誰も切り離されていないワンネスの世界。

例えて言うなら私達が目を閉じると暗闇がどこまでも続いていて、でもどこまでが自分というのはない。彼女の場合目を開けててもどこまでもすべてが繋がっていて自分を流体だと感じる。例えばAからBへ行く間には空間があり空気があって隔てられているけれど、彼女にはすべての粒子の流れの中を流体の自分が流れているように感じられる。

彼女の目は、物を互いに離れたものとしては認識できず、それどころか、あらゆるエネルギーが一緒に混ざり合っているように見えたのだそうです。それはもう涅槃(ニルヴァーナ)の世界ですね。彼女は自分の認知能力が奪われていくというのに、右脳意識は無事で、右脳マインドの彼女は至福の感覚に浸って恍惚としていました。

過去現在未来の区別もできない。記憶はなくすべてが「今ここ」。今この瞬間がすべて。これってマインドフルネスでも同じですよね。左脳が機能しないと右脳意識ではすべてが「今ここ」になる。今目の前で見えているものが全て。

本を読んでいてわかったのは右脳はスピリチュアルマインド、霊的情報の受信ボックスであり、本来の霊的知覚感覚能力を持つけれど、それでは人間として地上では生きていけない。それを地上で自分を周りから独立する個体として認識させ地上生活をできるようにするアンカーが必要で、それが左脳なんだなと私は理解しました。興味深いです。

書名:奇跡の脳(上記写真は文庫)
著者:ジル・ボルト・テイラー著
出版社:新潮社
初版:2009/2/25
頁数(ハードカバー) : 255ページ

一度ほとんどの機能を失った左脳が回復する奇跡

この本の凄さは、まず様々な能力が失われていく過程を、本人が冷静に分析し認知していること。ああ、これもわからなくなった、ああこれもおかしくなった、なんてことなの、文字が文字と認識できない!(全部粒子、ドットの塊に見える)などなど。

言語能力も失った彼女の脳がそれでも様々な能力が失われていく過程を記憶していて、回復するにつれ、記憶を取り戻していくさま、一つづつ認知できるようになる過程、何がわかって何がわからないのか、それらがすべて覚えていて、こうして回復後に全てを本に記せたということです。

しかも今の彼女は昔の彼女ではないのに。性格も元通りではない。なぜなら左脳が一度壊れてしまったから脳の機能は戻っても感情・感覚・認識が変わってしまっているので昔の彼女そのままではない。

それなのに一つ一つ赤子のように教えてもらいながら認知能力を回復させ、ついには解剖学など過去の専門知識を再度学び、とうとうこの本を著作するほどとなった。ここまで回復することも驚きですが、回復した彼女が専門家の視点から経験のすべてを語ったこの本の価値は計り知れない。

これから脳卒中になってしまうかもしれない人、それを支える家族、または精神疾患の認知障害者が何を感じているのか、彼らがどんな世界で生きているのか、こういったことに思いを寄せ、知るのに最高のバイブルだと思います。

私の経験した脳梗塞

私は実はプチ脳梗塞経験者です。でも本当にプチで、CTで脳スキャンしても何も見つからなかった。検査で引っかからないレベルの脳梗塞です。それでもちゃんと自覚症状があって脳外科で調べてもらったけど検査結果は「キレイなものです。大丈夫ですよ」。

でもそんなわけないと思っていた。そんな折、視て(霊視)わかる医者がいるという口コミで鹿児島まで飛行機で飛びました。その先生は精神疾患の権威。著書も複数。だけど画期的な診断方法などで全国から研修医が集まるような先生。脳梗塞などは専門外だけど、でも先生の目を期待して私のような患者が訪ねていく(笑)(先生にも「私、精神科だけど・・・っ」て苦笑された)

私は診察室に入るなり、椅子にも座ってないうちに指摘された。「あなた左側どうしたの。右側(脳)の後ろあたり、詰まったね」。

もうびっくり(驚)でも、自分でも脳梗塞だろうと思っていたのでやっと正しい診断を言ってもらえた思い、すっきり、ほっとしたのを覚えています。先生曰くあんまり小さいとCTでは映らないけど、脳梗塞は脳梗塞。症状は出る」とのこと。

私はその時なぜ自分はそうだろうと自覚していたかというと当時左半身全部麻痺してたから。動ける程度で軽くですけど。でも腕だけとかじゃなくて、半身全部っておかしいでしょ?思い当たる病名って脳梗塞ぐらいじゃない?

症状としては歩いていてもカクンと崩れそうな感覚、でもちゃんと歩けるけど。座っていてもお尻から崩れ落ちそうな感覚、座ってるけど。腕が自分の腕じゃないみたい、使えるけどね。

一応日常生活は送れるし、何事も無いように普通を装える。案の定普通に会社勤めしてても誰も気づかなかった。でも発症当初、実はペットボトルは左手では持ち上げられないし、電話をとっても受話器を支えられず落としそうな感覚。ずっとしびれがきれているような感じでコップを持ち上げられても腕から手首をまっすぐに保てず、手首からカクンと折れてこぼしそうな感覚。というかほんとにこぼしたけど。

触っても手も足も左全部自分の体ではない感じ。

でも脳ってすごい。ちゃんと回復したんですよ。元通りというわけではないですけどほぼ違和感ありません。今ではちゃんと左手で楽器の弦を抑えられるしビブラートだって効かせられるしね!

でもだから余計、この著者の回復の過程というのはすごく興味深く読みました。こういう経験を赤裸々にしかも専門医の目線で書いた著者を称賛したい。

私は重度の突発性難聴の経験もあるから、今度その経験を細かく書いてみようかなぁ。めまいや耳鳴り、そして今まさに発症して未来を思って不安のどん底にいる人とその家族の助けになるかもしれない。この著者がそう考えて書いたように。

最後に本書から気に入った言葉をお届けします。

「自分の人生に起きることを完全にコントロールすることはできないでしょう。でも、自分の体験を”どうとらえるか”は、自分で決めるべきことなのです。」

「奇跡の脳」より

投稿者プロフィール

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和花二胡奏者&ヒーリング整体&アーティスト
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